ちゅるゆーかの頭の中を晒すブログ

ちゅるゆーかの頭の中

出会わなければよかった人などないと笑います。

タスキメシ@額賀澪

陸上部と料理研究部の高校生を描く額賀澪著「タスキメシ」。
久しぶりに、本を読んで泣きそうになりました。



沁み入ったのが、上に立っていく人間の、期待や責任や重圧を描いた言葉でした。

「どんな世界だって、上に行く奴っていうのはそういうものを無理矢理背負わされるんじゃないかな」
(中略)
その後ろにはそうなりたくてなれなかった人が山のようにいて、その人達の期待とか願いとか嫉妬とか羨望とか、そういったものが彼らの肩にはのしかかっているのだ。
俺の分も頑張ってくれとか、あんたは俺達の希望の星なんだから、とか。そんな無責任だけど強い拘束力を持った言葉に縛られて、きっと年を経るごとにそれは増えていって、それでも走っていくのだ。
(中略)
これからたくさんの人を蹴落として、たくさんの人の夢を打ち破って、終わらせる。


受験でも競技でも仕事でも、上に行くためには誰かを蹴落として誰かの犠牲の上を踏みしめていかなくてはなりません。
覚悟を持って、その重さに耐えられる人のみが勝っていく。それもなんだか共通しているように思います。
よくオリンピックなどで「周りの人のおかげでここまで来ました。」なんてインタビューに答える様子が映っていますが、周りの人の応援も協力も、きっと重く感じられることがあるはずです。けれどそれも力に変えられることこそ、強いということなのでしょう。

私には、それができるでしょうか。
出世すること、高い給料を貰うことに対する覚悟とそれに耐えられる強さが欲しいです。



誰よりも共感したのは井坂都でした。
自分の足元を踏み固めるようにして料理という武器を身につけた彼女が、私には強くて弱くて眩しくて、それでいて自分と重ねてしまうところがあるのです。
「施されている自分が、どうしてもどうしても、堪らなく、許せない」ことにも、「悲しみでも苦しみでもなく、怒りの涙が次から次へと込み上げ」るのにも、言葉遣いが乱暴なのも身に覚えがあり、一番抱き締めたくなりました。
私は都ほど確立された足元がないけれど、出来るなら、都のように生きていきたいと思いました。



この本、胸が熱くなるような名言が多いです。

どちらか片方じゃなくて、どっちも抱えて持っていけ

諦める勇気があったんだ。続ける恐怖なんて、きっと乗り越えられる


進路に悩み、将来に悩み、続けることや辞めることに悩む高校生の時の気持ちを、思い出せる良い本でした。そして自分の足元を見返せるような。


続編をこれから読みます。楽しみです。