次のシグナル 右に折れたら
あの暗い窓が私の部屋
寄っていってともう何度も
心の中では話しかけてる
優しい人なんでしょう、好きでない女を家まで送ってくれるほど。次のシグナルと言えるほど、ある程度の距離を送って貰っているけれど、なかなか声に出して誘えないもどかしさと誘ったところで浮かない返事だろうという諦め。
暗い窓は心象風景でもあり寂しさを表していると思っていましたが、何度も聞くうちに、「暗い」と比べられるほどに周りは明るく、そんな周囲を羨ましく思う気持ちも表されているのだと思うようになっています。
「私」の孤独は、もうあそこだと言えるほど近い。
けれど車は走りつづける
あなたはラジオに気をとられる
せめてブルーに変わらないでと
願うシグナルはなんて意地悪
沈黙が心地良く思えるような関係ではない。
逆に埋めようと「あなた」は、普段聞いている音楽ではなくラジオを付けるような関係。
「あなた」は私が隣にいるのにラジオに気を取られていて、自分の存在はラジオ以下なのかという落ち込み。
流れる景色は霧が深い中で(後述)、きっとぼんやり赤い光が見えていて、それがポッとブルーに変わって、いつしか友情から愛情に変わった私の心の内さえ「あなた」は気付かない。「あなた」にとっては私の心の中だって霧の中です。
ああ外はなんて深い霧車の中にまで
いっそこんな車こわれてしまえばいいのに
ドキりとする歌詞はここです。
ほんの何分か前まで、素敵な車だとおそらく口に出して褒めたのではないでしょうか。好きな人の車だから。
だからこそ、霧が深くてこんなに近い「あなた」の心の中も見えず、自分たちの関係の未来さえ分からない中で、憎くなってきてしまったのだと思います。
とりとめもない冗談になら
あなたはいつでもうなづくのに
やっと言葉を愛にかえれば
あなたの心は急に霧もよう
相手にされないやるせなさ。軽口しか交わせない関係。短い言葉で、痛いくらいの心情が伝わってきます。
優しいようで残酷な「あなた」だと思います。
今夜となりにすわってるのは
小石か猫だと思ってるの
指をのばせばあなたの指に
ふれるとなんだか嫌われそうで
この歌で、ここの部分が一番好きです。
なんて欲を素直に表しているのかとドキドキします。
あなたの隣に座っているのは「小石か猫」ではなく確かに欲を持っている人間で、触れたいし家に上がって愛の言葉を囁いて欲しいんだ。「キスしたい」なんてストレートな言葉よりも余程欲に溢れた心を表す一文だと思うのです。
そして、手、ではなく指なので、かなりその距離は近いのでしょう。じりじりとこっそりと、近付けているのかもしれません。
それでも、あと少しの勇気がなくて嫌われたくなくて、最後に躊躇う。本当は、「あなた」から触れて欲しいのに。
ああ外はなんて深い霧車の中にまで
いっそこんな車こわれてしまえばいいのに
ああ外はなんて深い霧車の中にまで
いっそこんな車こわれてしまえばいいのに
こんな車壊れてしまって、深い霧の中「あなた」と立ち尽くしていたい。そんな霧なら「あなた」は何を見ることも出来なくて、近くにいる私に目を向けざるを得ない状況になるから。部屋に帰ることも明日の朝のことも全部どうでも良い。
優しい曲調で柔らかな声で、だからこそ欲望が透けて見える気がして、私はこの曲が好きです。