ちゅるゆーかの頭の中を晒すブログ

ちゅるゆーかの頭の中

出会わなければよかった人などないと笑います。

伝記の人にはなれない

伝記を読むのが好きでした。
図書室にあったそれは、目の大きくて美人だったりイケメンだったりの偉人たちが、つらい思いやコミカルな笑いを広げながら世界に名を残していくストーリーを描いていました。
名前を知っている人も知らない人もいました。
新しい世界を知りました。
何度でも読みました。
私も、この伝記に描かれたいと思いました。



月日は過ぎ、テレビの中で楽しそうに歌う歌手になるという夢も本が好きだからという理由だった作家になるという夢もなくなり、それでも、心の片隅で伝記に描かれたいという思いは消えませんでした。
けれど私は所詮何者でもなく、何者になる気もなく、何者になる力もなく、ごく普通の会社に少しだけ長い通勤時間をかけて通う会社員になりました。




何者かになりたかった。
でも、無理だったみたい。
大学で私のことをとてもとても気に入ってくれたS先生は、会いに行った時も褒めてくれたけれど、S先生、何者にも私はなれなかったし、なる気力もないみたいです。


今の私はとても身の丈にあっていて心地良くて、会社帰りにうどん屋に寄ったり惣菜や野菜を半額で買ったりするような日々の生活は、ささやかながらも充分な幸せを私にもたらしています。

たまに思い出すのです。
あの頃、伝記に描かれたいと切実に願った幼い私は、今の自分を見て満足するのだろうかと。
日々の生活を送ることが幸せで、誰にも注目されないことも幸せで、自由に自分のペースで毎日を規則正しく送る生活は、実は何よりも価値があるとあの頃の私は思ってくれるのだろうかと。
人生は選び取った選択の先にあり、今の自分はあの頃と全然違うようで地続きで。選択肢は無限にあったのに、なんとなく選んだ道でここまで来てしまいました。




何も成し遂げず子孫も残さない私は、誰に注目されることもなく死ぬでしょう。誰も私のことなど語り継がず、ましてや文章になど残さず。
けれど私と離れるのが寂しいと、誰かがいつか言ってくれれば。それが目標です。