ちゅるゆーかの頭の中を晒すブログ

ちゅるゆーかの頭の中

出会わなければよかった人などないと笑います。

【モンゴメリ】赤毛のアン

赤毛のアンを読みました。モンゴメリ作、村岡花子訳。
昔子どもの頃、アニメで見た時は心惹かれませんでした。おしゃべりで想像力豊かな女の子に魅力を感じなかったからです。
それは今思い返してみると、自分自身に近かったからかもしれません。



27歳になってふと手にとってみた小説では、マリラとマシュウの心情が描写され、娯楽のほとんどない時代の田舎町で、アンの想像力と明るさをどんなに二人が愛したのか伝わってくるのです。
特にマリラについて、厳しい人というイメージしかなかった私にとって、愛情深いことや周囲の人間をアンと同じように感じていたことや厳しさに隠していたユーモアがかなり新鮮でした。
最初は気難しい印象のマリラは、アンに影響され性格の変化が大きくなり、しかもアンがあまりにもマリラに向けて喋るので、私はマリラが実は主人公なのではと思うほどです。
マシュウはマリラに比べてあまり出てこないのですが、物語全体がマシュウの愛に包まれているような、そんな慎ましやかでいて一等大きい愛を感じました。膨らんだ袖や新しいコートや真珠のネックレス、アンを心から誇ったエピソードの一つ一つにマシュウの微笑む顔が私には見えるようです。



そして風景描写。美しい自然、そしてそれを楽しむアン。
朝が来るごとに朝を愛し、夕方が来るたびに感嘆のため息をつく彼女が近くにいたらどんなに毎日が素敵なことか、もう子どもでない私には分かります。
さらに読み終わった後に思ったのですが、物語全部を通して飽きることなくそれを愛し続けられるアンは、とてもすごいのではないでしょうか。



赤毛のアン。名作と言われている理由が分かりました。とても面白く、惹きつけられる物語でした。
例えその先の結末が分かっているとしても、アンの嘆き悲しみにハラハラし、その大仰な言葉遣いにマリラと一緒にクスッとし、マシュウと共に目を細めて成長を見守る、そんな物語です。
嫌いな人や小言ばかり言う小母さんがいて、親友も好きな先生もいて、満足を知るアンに心が惹かれます。
大事件というほどの事件は起きません。しかし、生きていく上で誰もが踏み越えてきたに違いないものをアンが経験していく姿が、ただひたすらに眩しく映るのです。



素晴らしいものを読んだ後はいつも、心がぼうっとして考えることが出来ません。なのに、こんなに興奮するままに書いてしまいました。
早く続きを読みたい、でもそれが勿体無くてたまらない、そんな小説にまた出会えて嬉しい限りです。