人間が生まれたばかりの頃、月はずっとずっと大きかったのでしょうか。
その時私の頭の中に浮かんでいたのは、ものすごくものすごく大きな月を丘の上で見上げる人の後ろ姿。今の100倍も大きな月。
まさか、そんなに大きかったはずないよな、と思えたのはずっと後になってからでしたが、今でも、月が好きです。

太陽よりも月が好きなのは、いつからでしょう。おそらく月が自分の力では輝けないと知った時からではなかったでしょうか。
あんなに大きいのに、星よりも大きく見えるのに、自分の力では光ることも出来ないなんて。月がなかったら地球に生命は誕生しなかったらしいですね。偉大なる月。それでも、自分の力では輝けないなんて、なんだか切なくないですか。ちょっと切なくて、だからこそ美しいんだと、理科の時間、月を想っていたような気がします。
この月が欠けたり満ちたりするのを見ていると、毎日が流れていくんだなぁ、と実感できます。大学にいた時は、みるみる細くなり、みるみる太るスマホの中の月に焦りを覚えたものでした。
何より、月を見るとなぜだか落ち着くのです。
自分では輝けない月が好きです。満ちたことに驕らず、すぐに細まる月が好きです。真夜中に、月を見ながら歩くのが好きです。
月は私を見守ってなどいません。月はただそこにいるだけです。それで良いのです。