ちゅるゆーかの頭の中を晒すブログ

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出会わなければよかった人などないと笑います。

余白の人

ふとした瞬間に思い出す言葉ってありませんか?
私は、声で記憶していることが多いので、時々ふっと耳に聞こえてくる言葉が幾つかあります。
その中の一つに、

「書は余白を味わうものなんですよ」

という書家のDさんの言葉があります。



余生は静かに暮らしたいと、東京を引き払い、私の町の隣町に住んでいるDさんは、全国的にも有名な書家らしいです。らしいというのは、書道界になんて私はちっとも興味がなくて何も知らないから。知っている方にとっては、ここで名前を書いたら驚かれるような人なのかもしれませんが。



で、そのDさんが言うことには、書は余白を味わうものであるということ。
そう言われてみると確かに、Dさんの書は読めなくても美しいのです。
(読めないというのは上手すぎて、教養のない私には読めないということです)



もちろん、余白だけではなくて、文字自体も美しいんです。息をしている字、という表現では表しきれません。私の字は形にとらわれて見動き出来ない字なのに、Dさんの字は、自由に跳ねる字に見えます。漢字は表形文字であると思えるのです。



でもやはり、何と言えば伝わるのでしょうか。Dさんの書の余白は、黒をのせることによって、白をより際立たせる感じがするのです。もしくは、黒を主張することで白を目立たせるというか。
白い絵を黒い墨で書いているような。
黒も白も、いきいきとしているのが分かるのです。



私はDさんの言葉を思い出す度に、人間に当てはめるとどうなのだろうと考えてしまいます。
人間の余白とはなんなのでしょうか。短所か、余裕か、もしかすると、無駄と称されることなのかもしれません。けれど、同じ色の紙に同じ色で文字を書いても読めないように、余白のない人間はつまらなさそうだと感じてしまいます。



長所と短所、焦燥と余裕、有益と無駄が組み合わさって、一人の人間が出来ているのなら、その余白もいいよねと言われる人になりたいものです。



ちなみに、Dさんにこの間聞いたら、使う墨は安くても一つ15万円だと言っていました。安くても、って高すぎでしょうと思うのですが、それを使いこなせることがすごいです。何が違うんですかと聞いたら、粒子が違うそうですが、たぶん私には違いは分からないと思います。
細かな違いが分かる、そんな人にもなりたいですね。なにせ、Dさんの書く文字は一文字につき10万円から、らしいですから。
……私も、美しく見える余白を得られたら、文字よりも高い価値が付けてもらえるでしょうか。